雨をとじこめて

下校前のショートホームルームが終わると、
「頑張ってきな!」
と、日菜乃と実乃理に送り出され、私は学校を後にする。



電車に乗って、図書館へ。

雨に濡れた傘をたたんで、入館する時は。

ハート形の可愛い心臓が胸の内側から飛び出して、図書館の中を踊りまくる想像をしてしまった。



いつもの恋愛長編小説に加えて、空良くんに選んだオススメの本を持って、足早に談話室に向かう。



(ふたりとも、もう来ているかな)



期待して、談話室に入った。



(……あれ?)



誰もいない。

私しか、いない。



(なんだ、まだなんだ)



残念に思いつつ、私は入り口に一番近いテーブルまで行く。

手にしていた本二冊を置くと、
(読んでくれるかな)
と、緊張感でいっぱいになる。



しばらく座って小説を読んでいると、談話室に人が入って来た。



「!!」




ふたりかもしれないと、顔を上げたけれど、全然違う。

中年のおばさんだった。

『何事?』と(いぶか)しげにこちらを見ていて、申し訳なくなって思わず頭を下げた。
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