雨をとじこめて
「いや、あの、別に……」
まだモゴモゴしてしまう私を見て、空良くんは楽しそうに笑って、こう言った。
「あはっ、可愛い」
『可愛い』?
今、『可愛い』って言った?
顔が真っ赤になる。
私がもしも漫画の中の住人だったら、絶対に真っ赤になった顔のそばに湯気を描き込まれている。
空良くんはスマートフォンを制服のポケットから取り出して、
「あのさ、りんごちゃんの連絡先を教えてもらってもいい?」
と、聞いてきた。
「はい!もちろん!」
「今日みたいに約束してても来れなかった時に必要だよなって思って」
「はい。私もふたりと連絡取れないことに、今日、気がついて」
電話番号とメッセージの送り先などを交換して、空良くんが言った。
「たまにメッセージとか送るかも」
嬉しくなって、何度も頷く。
「私も! メッセージ送ります!」
すると、空良くんが私をじっと見た。
「えっ、何でしょうか?」
「その、言葉」
「はい?」