雨をとじこめて

「敬語じゃなくてもいいのに」

「あ、はい。……あ、うん」

「無理しなくていいけど、なんか、敬語じゃないりんごちゃんと話してみたいかなって」

「敬語じゃない私……」

「寂しいじゃん。敬語って、なんか遠い感じがして」

「!!」



私は更に顔が赤くなっていく気がして。

慌てて、
「あの、オススメの本なんですが」
と、話題を変えた。



「あっ、うん。オレね、楽しみだったんだ」

「次に図書館で会った時でいいですか? もうオススメの本は決めてあるんですけれど、やっぱり実物を見てもらいたくて」

「うん。わかった。また楽しみにしておくね」



空良くんは笑顔を見せてくれた。

その笑顔にまたときめいてしまう。



「帰ろうか、遅くしてごめんね」



空良くんが立ち上がり、私も後に続いてカフェを出た。



「送ろうか?」
と、空良くんが言ってくれたけれど、
「平気です。それより宝良くんが心配だから、そばにいてあげてください」
と、断った。
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