雨をとじこめて
横目で羨ましく思いつつ、私はキッズスペースを通り過ぎ、読書室の中央にある、テーブル席に座る。
木目調の柔らかい雰囲気の大きな机が、八台並んで設置されていて。
一台につき、最大八人が座れるように、八脚の椅子が置いてある。
キッズスペースの近くで、様子が見える位置の椅子に腰掛けるのは、いつものこと。
これでもしも彼がやって来ても、こっそりチラチラ見られると、内心ほくそ笑む。
お気に入りの作家の、恋愛長編小説を開く。
もしも面白かったなら、……いや、きっと面白いだろうけれど、借りて帰ってもいい。
図書館で読むことが好きだから、あんまり借りたことはないけど。
本の世界に旅立って、二十分程経った頃。
読書室の引き戸が、カラカラと音を立てて、ゆっくりと開いた。
思わず顔を上げる。
入室してきたのは彼と、いつもの小さな男の子だった。
嬉しくなって、心臓がわくわくドキドキ踊りだす。
(会えた……!)
やっぱりかっこいいな。
彼らは靴を脱いで、キッズスペースの虹色のラグの上に行く。
小さな男の子をひざに乗せた彼は、絵本を開いた。
小さな、柔らかい声で、物語を読んでいく。