雨をとじこめて
空良くんが、そんな裕悟を見た。
私から鍵を受け取っている裕悟を。
「その人、誰?」
と、空良くんが言った。
「えっ?」
裕悟が呑気に自分を指差す。
「りんごちゃんの彼氏?」
なぜか空良くんの声が、元気がないように聞こえる。
(そんなわけないのに)
「えっ? ちょっと待って」
盛大に戸惑っている裕悟に、
「あんた、ややこしいからもう帰って」
と、私が頼んでいると、
「あ、いいよ。ごめん、オレが帰るね」
なんて言って、空良くんが歩き出した。
(えっ!!)
「待って! 空良くん!!」
走って追いかける。
傘がやっぱり邪魔で、走りにくい。
足が遅いことを、こんなに後悔する日が来るなんて。
すると裕悟も走って私を追い抜き、空良くんの肩を掴んだ。
「まっ、待ってください!!」
「……」
珍しく、空良くんが俯いている。
そんなふたりに私も追いついた。