雨をとじこめて

「紹介します」
と、私は裕悟を指差す。



「弟の裕悟です!」

「はい! オレ、弟です!」



「えっ?」
と、空良くんがきょとんとしている。



「ってか、指差すな!」

「うるさいなぁ、今それどころじゃないの!」



ふたりで小声で言い合っていると、
「……えっ、あの、弟さん?」
と言った空良くんの顔が、みるみるうちに赤くなっていく。



「姉がいつもお世話になっています!」

「あ、いえ、こちらこそ……」

「じゃあ、オレは帰ります!!」



裕悟はそう言って、駅の方向へ去って行った。



「は、恥ずかしい」
と、空良くんはその場にしゃがみこんだ。



(可愛い)



なんで、さっき元気がない声になったの?

なんで、顔を赤くしているの?



(そんな可愛いことされたら、勘違いしちゃうじゃん)






「りんごちゃん」
と、空良くんは顔を上げる。



「何ですか?」
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