雨をとじこめて
「ごめん、りんごちゃん」
と、困った顔をした空良くんが言って、絶望感に襲われた次の瞬間。
私の耳に届いた空良くんの言葉は、予想外のものだった。
「ぎゅってしてもいい?」
「……」
「……」
「……えっ!?」
驚きすぎて、声がひっくり返った。
「いや、うん!……ごめん!聞かなかったことにして」
空良くんが慌てている。
やっぱり顔が赤い。
(可愛い……)
コホンと咳払いした空良くんは、
「あの、前に言わなかったかな? オレ、もう失恋しているって」
と、言う。
「うん。でもまだその人のこと、好きなんでしょう?」
「……りんごちゃんと初めて話した日までは、そうだったよ」
「えっ」
「繁華街で会ってた女の子……、オレの幼馴染みなんだけど、その子に年下の彼氏が出来て、告白しないまま失恋したんだ」
「……うん」
「失恋してもしばらく、幼馴染みと話していたら切なかったし、つらかった。まだ好きだって気持ちはあった」
「うん」
「でもさ、りんごちゃんと知り合って、りんごちゃんのことばっかり考えるようになって」
「……」