雨をとじこめて

「いつの間にか、幼馴染みと話していても楽しく話せるだけで、切ないとかつらい気持ちがどこかに行ってた」

「空良くん……」

「あの日も幼馴染みとその彼氏や、オレの友達何人かで集まってたんだけど、楽しい気持ちだけだったよ」



傘を叩く雨音が、優しくなっている。

空良くんは私を見つめて、
「りんごちゃんのことが好きになったから」
と、言った。






「好きだよ、りんごちゃん」







空良くんが傘を置いて、私の傘の中に入って来た。



「空良くん……」



夢でも見ているのかな?

信じられないくらいに、ふわふわした心地で、現実味がないんだもん。



でも。

目の前の空良くんは。

耳まで赤くして、優しい瞳で私を見つめてくれている。



(両想いなんだ……)



片想いが実る時って。

こんなに泣きたくなるものなんだって。

私、初めて知ったよ。




風が吹いて。

傘がぐらついたから。

空良くんが傘を持って支えてくれた。



両手が空いた私は思わず、空良くんに一歩近づいて抱きしめた。
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