雨をとじこめて

「それ? オススメの本」
と、空良くんが私の手にしている本を見て、尋ねる。



「はい。もし良かったら、読んでみてほしくて」



私達は窓に近いテーブルに荷物を置いた。

本を見せやすいように隣に座ると、
「……写真集?」
と、表紙を見た空良くんが、興味深そうに聞いてくれる。



「そうです。写真に詩が添えられていて、すごく素敵なんです」



空良くんは、
「ありがとう。大事に読むね」
と言って、ニッコリ微笑んだ。



つられて私も笑顔になる。

その時。

空良くんの顔がふいに近づいてきた。



「えっ?」



一瞬。

何が起きたのかわからなかった。



唇に、ほのかにやわらかい感触が残っていて。

そのことで今、私は空良くんにキスをされたんだと気づく。



「えっ……」
と、戸惑っていると、
「可愛い、りんごちゃん」
空良くんが呟いた。



顔から火が出そうなくらい、赤くなっていると思う。

そんな私を見て、空良くんは幸せそうに笑ってから、再び唇を重ねた。
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