【女の事件】恨散髪(さんぱつ)
第3話
時は、午後1時半頃であった。

またところ変わって、今治国際ホテルの結婚披露宴場《ひろうえんじょう》にて…

草介《ソースケ》の気持ちが不安定になったことが原因で結婚披露宴《ひろうえん》の開始予定時刻が午後2時までに延長された。

それまでに結婚披露宴《ひろうえん》を始めることができない場合は中止となる。

この時点で、予定していた内容が大幅に変更された…

バイシャクニンごあいさつ・新婦の友人代表のごあいさつ・新郎の友人代表のごあいさつ・祝電披露などが中止になった。

この他、後半で予定されていた内容も一部が変更された…

エンゼルサービスについても取りやめになる可能性が出た…

草介《ソースケ》が控え室の中で暴れているなど…精神状態が不安定になった…

ホテルのスタッフさんたちは、草介《ソースケ》の親きょうだいたちを電話で呼んで引き取ってもらうことにした。

これで結婚披露宴《ひろうえん》は確実に中止になるようだ。

そんな中で、あらたなもめ事が発生した。

エンゼルサービスを務める予定だった女の子ひとりが不測の事態が発生したので両親《おや》と一緒に急きょ帰宅することになった。

場所は、結婚披露宴場《ひろうえんじょう》の入り口にて…

純白のウェディングドレス姿のさおりは、帰ろうとする親子3人を引き止めた。

さおりは、おたついた声で母親に言うた。

「どうしてお帰りになるのですか!?」
「先生!!うちらは急いでいるのよ!!」
「それだったら、ランチだけでもお食べになられたらどうですか!?」
「そんなヒマはないのよ!!」

父親は、ものすごく起こった声で言うた。

「私たちは、今から久万高原《くまちょう》へ行くのですよ!!」
「久万高原《くまちょう》へ行くって?」
「義父が運転していた車が茶畑に突っ込んだ事故を起こしたのよ!!茶畑で作業をしていた女性が亡くなったのよ!!」
「交通事故…」
「5分前に主人の妹から電話があって…死亡した女性の夫が『ぶっ殺してやる!!』と激怒したのよ!!」
「そんな〜」
「久万高原《くまちょう》は主人が行くけど、うちと(長女)は主人の見送りを終えたら静岡の実家へ帰ります!!」
「それじゃあ、小学校の入学式はどうするのですか!?」
「1年間休学します…先生、うちらは時間がないのです!!…(長女)!!急ぐわよ!!」

このあと、親子3人は大急ぎでホテルから逃げ出した。

一体、どうなっているのよ…

さおりは、ものすごくおたついた表情であたりを見渡した。

この時、あらたなもめ事が発生した。

エンゼルサービスを務める予定だった男の子が母親と一緒に結婚披露宴場《ひろうえんじょう》から出てきた。

さおりは、おたついた様子で母子を止めた。

「待ってください!!」
「どいてよ!!」
「なんでお帰りになるのですか!?」
「母から電話があって『飛行機があるうちに家に帰りなさい!!』と言われたのよ!!」
「飛行機…」
「この子のパパがオウショウされたのよ!!」
「オウショウ?」
「だから、この子のパパがソコクのために戦うことになったのよ!!」
「ここは日本ですよ!!」
「なんなのよあんたは!!この子のパパの生まれた国はウクライナよ!!ソコクは今戦時下に置かれているのよ!!この子はパパと離れ離れになるのよ!!」
「わけの分からないことを言わないでください!!」

この時であった。

エンゼルサービスを務める予定だったもうひとりの男の子の親類の叔母《おば》がやって来た。

親類の叔母《おば》は、ものすごく怒った声で言うた。

「ちょっと先生!!」
「えっ?」
「(もうひとりの男の子)の叔母《おば》でございますが、(もうひとりの男の子)はどこにいますか!?」
「あの…どちら様でしょうか?」
「うちはオイを迎えに来たのです!!」
「オイゴさんを迎えに来たって…」
「(もうひとりの男の子)のママが1時過ぎにキトクにおちいったのよ!!」
「ええ!!(もうひとりの男の子)くんのママがキトクにおちいったって!?」
「(もうひとりの男の子)のママと(父親)は…うちらのせいで婚期が大きく遅れたのよ!!…(もうひとりの男の子)のママは、42で出産したのよ…(父親)も腺がん(十二指腸がんでもある)の治療のために(国立四国)がんセンターに入院中よ!!」
「そんな〜」
「先生!!」
「すみません〜」
「分かっているのだったらオイゴを呼びなさい!!」

この時であった。

叔母《おば》のらくらくスマホのライン通話アプリの着信音が鳴った。

叔母《おば》は、ものすごくイラついた表情で電話に出た。

電話は、叔父《おじ》(父親の長兄)からだった。

「もしもし!!…どうしたのよ…ええ!!(父親)が大量に吐血したって!?…それで…血圧が急激に下がったって!?…分かったわ…」

この時、エンゼルサービスを務める予定だった女の子の家族4人が男の子を連れてやって来た。

お父さまが男の子を叔母《おば》のもとに帰した。

「お連れしました~」
「ありがとうございます…急ぐわよ!!」

その間に、もう一組の母子がホテルから出た。

さおりは、結婚披露宴場《ひろうえんじょう》から出ようとした親子3人におたついた声で言うた。

「待ってください!!」
「おい!!なんで止めるのだよ!!」
「どちらへ行かれるのですか!?」
「今から家に帰るのよ!!」
「なんで帰られるのですか!?」
「非常事態が発生したから帰るのよ!!」
「非常事態が発生したって…」
「義母から電話があって、義父がケーカンを名乗った男にキャッシュカードをだまし取られたサギに引っかかったのよ!!」
「サギの被害に遭ったって!?」
「うちら夫婦の家族のためにたくわえていた預金がなくなったのよ!!他にも、家の貯蓄を全部持っていかれたのよ!!」
「そんな〜」
「今、家に主人のきょうだいたちがいるのよ!!…義父は要介護度4の認知症なのよ!!」
「そんな〜」
「どけおら!!」

父親は、さおりを両手で突き飛ばした。

その後、一家3人は足早にホテルから出た。

それから数分後であった。

エンゼルサービスを務める予定だった子どもたち全員が実家で不測の事態が発生したことを理由に親御《おや》と一緒に帰宅した。

これにより、エンゼルサービスは取りやめになった。

この時、結婚披露宴場《ひろうえんじょう》で大規模な乱闘事件が発生した。

出席者の席の配置がテキトーに並んでいたことが原因で仲が悪い人同士になっていた席が少なくとも7席あった。

大規模な乱闘は、問題になっている席で発生した。

ひどい場合には、相手に体当たりをして倒したあと逃げ回っていた出席者がいた。

逃げ回っていた出席者は、止めに入った十数人の出席者たちに押さえつけられたあとボコボコにどつき回された。

体当たりされた出席者は『(体当たりした奴)!!ぶっ殺してやる!!』と叫びながら暴れまわっていた。

3人の出席者たちは、体当たりされた出席者を必死になって止めた。

なんてこった〜

エイスケとかなで夫婦は、ものすごくおたついた表情であたりを見渡した。

またところ変わって、理容院《さんぱつや》にて…

迅《じん》の髪の毛をサンパツしていたしほりは、ひどくいらついていた。

桃子から『髪の毛を短くカットしてほしい…』と言われたので、しほりは髪の毛を短くカットした。

しかし、うまくカットすることができなかったのでひどく困っていた。

「ああ!!うまくいかない…どうしょう〜」

店の奥さまは、ひどくイラついた声でしほりに言うた。

「なにやってるのよあんたは!?」
「奥さま!!どんなにカットしても短くならないので困っているのです!!」
「のきなさいもう!!…すみません〜」

店の奥さまは、事態をシュウソクさせるために大急ぎで迅《じん》の髪の毛をカットする作業を始めた。

しかし、ハサミの切れ味が悪いのでうまくカットすることができなかった。

「困ったわね~」

思い切り困り果てた奥さまは、電気バリカンに換えた。

大急ぎでなんとかしないと…

もうすぐ2時になってしまう〜

店の奥さまは、電気バリカンを使って髪の毛を短くカットする作業を始めた。

しかし、その間にあらたなもめ事が発生したようだ。

またところ変わって、今治国際ホテルの中にある新郎の控室にて…

新郎の控室に、ナタを持った男が乱入した。

ナタを持った男は、草介《ソースケ》のセクハラの被害を受けたことを苦に自殺した女性従業員さんのお兄さまだった。

ナタを持った男は、ナタを振り回しながら『ぶっ殺してやる!!』と叫んでいた。

草介《ソースケ》は、必死になって許しごいをした。

「殺さないでくれ〜…殺さないでくれ〜」
「ふざけるな!!妹をレイプして殺した課長《クソヤロウ》はぶっ殺してやる!!」
「許してくれ〜…この通りだ!!」
「だったら命でつぐなえ!!」
「イヤだ!!死にたくない!!いきてつぐなうから許してくれ!!」

それから10分後であった。

武装した警察官たち50人が駆けつけてきた。

リーダーの警察官が銃を向けながら男に言うた。

「ナタを捨てろ!!」

ナタを持っている男は、ゲッコウした声で言うた。

「うるせー!!この男はオレが処罰するのだ!!」
「ムダな抵抗はやめなさい!!」
「来るな!!来たらほんとうにこの男をぶっ殺すぞ!!」

それから10分後であった。

ナタを持った男は、ナタで自らの首を斬《き》って、命を絶った。

それからまた20分後であった。

ホテルの館内に愛媛県警《けんけい》の警察官たち100人がやって来た。

警察官たちが到着したあと現場検証が始まった。

これで、さおりと草介《ソースケ》の結婚披露宴《ひろうえん》は完全に取りやめとなった。

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