元・最下位の妃、2度目の政略結婚で氷の冷酷王に嫁ぎます~「愛は望むな」と言われた出戻り王女が愛され妃になるまで~

「どこなのかは聞いておりません。ただ、連れて行ってくださると約束しているだけです」

 樹氷とは、木に霧や雲がぶつかることで細かな氷として付着し、まるで雪の木のように見えることを言うそうだ。アリスは一度も見たことがないので、とても楽しみにしている。

「まあ、そうなのですね。陛下が連れて行ってくださるなら、さぞかし美しい樹氷が見られるのでしょうね。是非行き先がわかったら教えてください」
「はい、もちろんです」

 返事をしながらも、アリスは不思議に思う。
 行ってから、どこに行ったか、そこの樹氷が実際どうだったかを教えるならまだしも、行く前に行先を教えてほしいというのはあまり聞かない。

(よっぽど早く行きたいのね)

 樹氷とはそれほどまでに美しいものなのだろうか。ウィルフリッドと行くのが、ますます楽しみになった。

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