元・最下位の妃、2度目の政略結婚で氷の冷酷王に嫁ぎます~「愛は望むな」と言われた出戻り王女が愛され妃になるまで~
「陛下は子供がお嫌いなのですか?」
少し迷ってから、おずおずと問いかける。
「嫌い? 世継ぎに対して嫌いも何もあるか」
ウィルフリッドはフッと笑う。
「俺は本来、国王になるべき器ではなかった。俺の血など、ここで絶えてしまえばいい」
続けて彼がぼそりと呟いた言葉の意味が分からず、アリスは困惑する。
(本来、国王になるべき器ではなかった?)
今の言葉は、ウィルフリッドは国王になどなりたくなかったのにやむを得ない事情──前国王と王太子が同時に亡くなったことにより、仕方なく国王になったと言っているように聞こえた。
(どういうことかしら?)
アリスが事前に調べた噂では、ウィルフリッドは自分が国王になるために前国王と王太子を異能を使って死に追いやったと。
(……もしかして、あの噂って誤解なのではないかしら?)
アリスがウィルフリッドと知り合ってからまだ数カ月だが、彼がそんな残虐非道なことをするとはどうしても思えなかった。
でも、もし国王と王太子を殺したという事実自体が誤解だとしたら? ウィルフリッドは父親と兄を一度に失い、その上その犯人であると疑いの目を向けられた。さらに、望んでもいない国王の役目を押し付けられ、多くの自由を失った。