溺れて、絆される
幼なじみ
英琉が莉瑠に、過保護なまでに尽くすのは理由がある―――――――


英琉、莉瑠、そして洸介。

三人は、幼稚園児の頃からの幼なじみだ。

御笠家の豪邸近くにあるマンション(御笠所有)に、英琉と洸介がいた。
そのマンションの敷地内の公園で、三人は出逢った。
その時はまだ、三人とも二歳くらいだった。

幼稚園、小学校、中学校…三人はいつも一緒だった。
英琉と洸介といたくて、莉瑠は令嬢ながら一貫校には行かず、普通の幼稚園と小中校に行ったから。

幼い頃から眉目秀麗で、どこか大人びた英琉。
愛くるしい容姿で、おしとやかな莉瑠。
スポーツ万能で、やんちゃな洸介。

一緒に登校し、学校内でも一緒に過ごし、下校してからも公園で一緒に遊ぶ。

それは中学三年の夏休み前まで、ずっと変わらなかった。


それは――――中学三年の夏休みが終わった、二学期。

ある出来事が、三人の関係を大きく変化させた。

洸介の両親が離婚をしたのだ。
更に父親も母親も出ていき、洸介は親戚に預けられることになったのだ。

しかもたらい回し状態で、洸介は居場所を失った。

そのことが原因で、洸介は一気に荒れた。

英琉と莉瑠から離れ、不良とつるむようになったのだ。

喧嘩三昧で、問題を起こす。
警察にも、何度も世話になっていた。

そのため英琉と莉瑠の両親は、洸介と関わることを禁止するようになった。

“あんな不良とは、縁を切りなさい”と―――――

正直莉瑠も、洸介と関わることが恐ろしく、避けるようになっていた。

だからこそ莉瑠は、あえて女子高(お嬢様校)に通うことにし、洸介と距離を置くことにしたのだ。

しかし………英琉は違った。

洸介は幼なじみで親友だからと、洸介と同じ高校を選び、洸介と同じようにタトゥーを彫り(この時は、背中の鷲のみ)ピアスをあけ、髪の毛も染めて別人のようになったのだ。


『―――――英琉、やめとけよ』

『どうして?』

『“莉瑠のために”やめとけ』

『洸介は?』

『は?』

『俺は、莉瑠が一番大事だ。
………でも、洸介も大事だ』
 
『その気持ちは嬉しいよ?
俺だって、英琉と莉瑠は大事だ!
だからこそ、英琉に莉瑠のこと任せたい!』

『莉瑠は大丈夫だ。
莉瑠には、両親も友達もいる。
でも、洸介には俺しかいないだろ?』

そう言って、半ば強引に洸介についていったのだ。
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