溺れて、絆される
中学を卒業して、久しぶりに英琉と洸介に会った衝撃を今でも忘れない。


高校一年の春。
入学して、1ヶ月半くらい経った日だ。

卒業式を終えた途端、音信不通のようになった英琉と洸介。

やっと連絡がついて……久しぶりに会えることになり、莉瑠は軽い足取りで待ち合わせ場所に向かった。

『………え……』

だ、誰……?

制服を着崩した、英琉と洸介。
青髪の英琉と、赤髪の洸介。
二人の耳にはピアスが光っている。
洸介に関しては、首に鷲の翼が彫られていた。

別人だった――――――

私の知っている、英琉くんと洸介くんがいなくなった。
洸介くんが、英琉くんを奪った……

ゆっくり二人に近づく、莉瑠。

『英琉く…洸介くん…』

『莉瑠』
『莉瑠、久しぶり』

切なく笑う、英琉と洸介。

この時にはもう…莉瑠の目には溢れそうな涙が溜まっていた。

『ど…して……?』


『『…………ごめんね』』


この日、二人はただ…『ごめんね』としか言わなかった。


そして――――この日から本格的に莉瑠は英琉と洸介から距離を置き、連絡を絶った。


英琉と洸介も、莉瑠に関わらないようにしていた。

あっという間に、2年半経ち………
3年の秋。

『――――英琉』

『ん?』

『お前、卒業したらどうすんの?』

『どうもしない。
適当に暮らす。
今少しずつだけど、投資しててさ。
だから、生活には困らないし』

『………違うし』

『………は?』

『…………そうじゃねぇよ!』

『何が?』

『莉瑠のこと!
好きなんだろ?』

『こんな俺と一緒にいないほうがいい…』

『じゃあ、いいんだ?
莉瑠が、他の男のモノになっても』

『………』

『あくまでも、噂だが…
莉瑠、告白されまくってるらしいぞ?
御笠財閥の令嬢で、あの容姿だからな。
もう…ヤバいらしい』

『………』

『………』

『………』

『英琉だから、俺は身を引いたんだが…?』

『は?』

『“英琉になら”莉瑠を任せられる。
英琉以外の男に渡すくらいなら、俺がもらってい?』

『洸介、お前…』

『英琉、もう…いいんだぞ?
俺の傍にいてくんなくて。
TENの仲間達がいるし、影からでも俺はお前等を支えられたら、それで十分なんだ!』

『………』

『前から言ってるよな?
“俺は、英琉と莉瑠が大事”って。
ずっと近くで見てきたんだ。
英琉と莉瑠のこと。
二人は、運命みたいに惹かれ合ってただろ?
莉瑠の両親も、お前のことは認めてる。
お前、頭良いし。
俺にとっても英琉と莉瑠は“光”なんだ!』



『でも……もう、遅い……』 
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