溺れて、絆される
そして莉瑠は、K高の前にいる。

“今まで逃げていた分、今度こそ二人から離れない。
何があっても、二人の傍にいよう”

そう、決心したのだ。


『――――洸介ー、英琉ー!』

『んぁ?』
『何?』

『校門前にさー、めっちゃ可愛い子いたぞ?』

『ふーん』
『どんな子?』

『あの制服、A女子じゃねぇかな?』
『だとしたら、お嬢様じゃん!』

『『え……!?』』

『あーこの前、下の奴等がナンパした子達?』

『そうそう!
――――――って!!英琉!?洸介!?』

英琉と洸介が、教室から駆け出した。


『『………莉瑠!!?』』

莉瑠がいて、ナンパされていた。

『いいじゃん!』
『俺達と遊ぼ?』

『ごめんなさい、お友達に会わせてください』

『莉瑠!!』
『莉瑠!なんでここに!?』

『あ…英琉くん!洸介くん!』

パッと莉瑠の表情が華やいで、パタパタ…と駆け寄り見上げる。

『莉瑠、帰れ!』

『え……英琉、く……』

『ここには来るな!』
『莉瑠、危ねぇから!な?』

『………嫌!!』

『『は?』』

『もう離れない!!』

『は?』
『莉瑠?』

『決めたの。
もう、二人から離れない!』

『………』

『莉瑠、お前…』

嬉しい………
莉瑠が会いに来てくれた。

英琉は、狂喜に震えていた。

莉瑠を抱き締めたい衝動にかられ、莉瑠の手を掴もうと動く。

でも、こんな俺といてはダメだ……!

しかし、途中でピタリと止まった。


『―――――帰れ。莉瑠』
行き場のない手で、拳を握る。

『え……』

『英琉、お前…なんで…!?』
洸介も驚いている。

英琉は引きちぎられそうな思いを隠し、莉瑠を睨みつけ言い放った。


『帰れ!!』


目を見開き、莉瑠の目が悲しみに揺れる。
あっという間に目が潤み、涙が溢れ出した。

それでも英琉は、莉瑠を睨みつけることをやめなかった。

莉瑠は『また、来るね…』と言って、トボトボと去っていった。


その瞬間、洸介が英琉の胸ぐらを掴んだ。

『英琉!!お前、なんて事を………え…!?』

英琉を見て、洸介が目を見開く。

英琉が泣いていたからだ。

ゆっくり、手を下ろす洸介。


『ダメなんだ…洸介。
俺は、もう…莉瑠を傷つけたくない。
莉瑠は、真っ白で綺麗だから。
だからこんな汚れた俺といない方がいいんだ……』
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