溺れて、絆される
『莉瑠…莉瑠……』

最低なのに、英琉は興奮が収まらない。
大好きな莉瑠と繋がっていることに……

すると―――――

不意に、莉瑠の抵抗する力が抜けた。

『え……?』

思わず英琉も動きが止まり、莉瑠に向き直る。


『………っ…莉、瑠…?』


莉瑠は涙と悲しみに歪んだ顔で、英琉を真っ直ぐ見上げていた。

そして、ポツリと言った。

『泣かないで?英琉くん』

『…………は?』

そう。
英琉は、泣いていた。

『いいよ』

『………え?』

『英琉くんの、好きにして?』

『莉瑠……?』

『私、英琉くんのこと大好き。
だからいいよ。
英琉くんになら……
“何をされてもいい”』

『莉瑠…』

『私、お付き合いしたことないの。
………だって、ずっと英琉くんが好きだったから。
告白されても、断ってたの。
キスも、さっきの英琉くんとのキスがファーストキス。
良かったぁー
ファーストキスが、英琉くんとで!
でもほんとは、もっと…ロマンチックなのを想像してたけど…』

身体は震え、涙と悲しみで顔はぐちゃぐちゃ。

なのに見上げる瞳は真っ直ぐで、綺麗だった。


そこで英琉は、漸く正気に戻った――――――

莉瑠を起こした英琉。
自身のジャケットを羽織らせた。

そして……

『ごめん』

そのまま土下座をして、頭を下げた。

『英琉くん…』

『ごめん!』

謝罪の言葉しか出ない。
英琉は許されたくて、何度も何度も地面に頭を擦り付け謝罪した。

『英琉くん!!もう、やめて!!』

『ごめん!』

『英琉くん!』

『ごめん!』

『お願い!顔上げて!!』

『莉瑠…』

『英琉くん』

『………』
ゆっくり顔を上げた、英琉。

英琉の綺麗な顔は、土で汚れていた。
それを、優しく払う莉瑠。

『………莉瑠、なんで?』

『ん?』

『俺、最低なことしたのに…』

『嫌じゃなかったから』

『は?』

『言ったでしょ?
英琉くんのことが好きって!
好きな人に抱かれるなら、強引でもいい』

『………何、それ…』

『それに……』

『え?』

『英琉くん、震えてたから』

『…………え…』

『私を引き離したくて“わざと”したんでしょ?』

『………』


『だから、いいの』

莉瑠は、優しく微笑んでいた。
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