溺れて、絆される
それから二人は、近くのホテルにいた。

シャワーを浴びた莉瑠が出ると、英琉が紙袋を渡してきた。

『ん?これは?』

『制服、ボロボロでしょ?
これ、着て?
俺が選んだから、莉瑠の趣味じゃないかもだけど。
制服は、弁償するから』

『………わぁ…可愛いワンピースね!
ありがとう!』 

『俺、出るから。
ゆっくりして?
あとこれ、タクシー代。
危ないから、タクシーで帰りなよ?』

『え?まだ、返事聞いてない!』

『は?』

『英琉くんの返事聞いてないよ?』

『返事?』

『英琉くんの気持ちが知りたい。
私のこと、どう思ってるの?』

『………』

好きに決まってる。
好きで、好きで……苦しくて、息ができないくらいだ。

『フルなら、ちゃんとフッて?
じゃないと…私、前に進めない!』

『………』

フる?
そんな事、できるわけがない。

『はっきり言ってくれたら、もう…英琉くんと洸介くんの前に現れないから』

『………』

もう…莉瑠に会えない……?

『私は英琉くんとお付き合いしたくて、ずっと追っかけてきたんだよ?
英琉くんがちゃんとフッてくれないと、新しい恋できない!』

『新しい、恋…』

『うん』

“じゃあ、いいんだ?
莉瑠が、他の男のモノになっても”

不意に、洸介の声が頭の中で響いた。

“英琉以外の男に渡すくらいなら、俺がもらってい?”

例え相手が洸介でも、渡したくない……!

『――――――嫌だ…』

『え?英琉くん?』

『渡したくない…』

『え?え?』

『莉瑠を、失いたくない…!』

『英琉く―――――』
莉瑠の手を取り、引き寄せた英琉。
そして、力強く抱き締めた。

『…………好きだよ』

『え……?』

『俺も、ずっと好きだった……!
莉瑠が好きだ』

『………うん/////』

『もう傷つけないから。
もう離さないから。
俺の傍にいて?』
向き直り、頬を包み込んで言う。

莉瑠は満面の笑みで『はい!』と頷いた。


“大学は一緒の大学に行こう?”

莉瑠にそう言われ、英琉と莉瑠はS大学を受験し入学した。

“エルル”“リルル”と呼び合い、大学入学と同時に同棲を開始したのだ。


英琉は……

“もう二度と莉瑠を傷つけない。
一生かけて莉瑠を守り、愛して、傷つけた罪を償おう”と心に誓う。

そして胸に、十字架とインフィニティの蛇。
更に“R”のアルファベットを彫ったのだ。
< 22 / 54 >

この作品をシェア

pagetop