溺れて、絆される
メンバーの中の、オザトという男性がしつこく声をかけてきていた。

「莉瑠ちゃん、今度二人で会わない?」

「ごめんなさい。
私、恋人がいるので」

「いやいや、下心じゃなくて!
普通に、ご飯行こ?」

「ごめんなさい」

「おいおい…オザト!
やめとけよ!」
「お前、酔っぱらいすぎ!」

「ごめんね、莉瑠ちゃん。
オザトは向こうに追いやるから!」
友人達にオザトが連れて行かれ、莉瑠はホッと肩を撫で下ろした。

はぁ…と、思わずため息をついてしまう。

「莉瑠」

「あ…ごめん…」

「ううん!
予想はしてたけど、予想以上ね(笑)
莉瑠の人気ぶり!」

「まだ、解散にならないのかな?」
(早く帰りたい。エルルに会いたい)

「もうすぐだと思うよ!
てか、聞いてみるね!」
亜純が幹事のメンバーに聞きに行くと、その隙を狙ったようにオザトが隣に戻ってきた。

「え……」

「ねぇ、二人で抜けようよ!」
そう言って、莉瑠の手を掴み引っ張った。

「ちょっ…離してください!!」
力づくで連れて行かれる莉瑠。
必死にもがきながら、抵抗するが全く歯が立たない。

「嫌!!離して!!」
(助けて!エルル!!)
怖くなり、目が潤み始める。
すると………

「やめろよ、お前」
知らない男性が、莉瑠とオザトの前に立ちはだかった。

「は?お前、何?」

「嫌がってんだろ?その女性(ひと)
離してやれよ。
しかも、泣いてる。
女泣かせるとか、最低だぞ?
つか、酒臭っ!」

「は?」
オザトが、男性の胸ぐらを掴んだ。

「やめとけ。お前じゃ、俺には勝てない」
しかし抵抗もせず、至って普通に見据えている。

でも莉瑠からすれば、あまりにも恐ろしい光景だ。

“自分のせいで、関係ない男性が傷つけられる”

そう思った莉瑠は、オザトを止めようと駆け寄った。
「オザトさん!やめてください!」

「…るせぇよ!!」
莉瑠はオザトに跳ねのけられ、軽く吹っ飛んだ。

「キャッ!!
…………っ…たい…」
尻もちをつき、はずみで手を擦りむいてしまう。

「………」
その瞬間だった―――――

男性の纏っていた雰囲気が、ズン…と重みを持って落ちた。

「いてててて…!!!!」
オザトの苦痛の声が響き渡る。

男性に逆に胸ぐらを掴まれ、持ち上げられていた。

「うぅ…く、くるじ…い…」
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