溺れて、絆される
「おい、俺、言ったよな?
女泣かせる奴は最低だって。
女傷つける奴は、もっと最低だぞ」

「離し…て、くれ…頼、む…」

「は?
その前に、言うことあんだろ?
こちらの方に謝罪しろ」

「わか…た、か…ら…頼、む…」

男性はオザトを離すと、その場にひれ伏させた。
「ほら、土、下、座!」

土下座をさせると、頭を持ち地面にこすりつけた。
「謝れよ、ゲス!」

「す、すみません…!」

「も、もう結構です!
お願いします!もう、やめてください!」

「あ、そうですか?
はい!終わり!」
莉瑠の懇願に微笑み、パッと手を離した。

オザトに「消えろ」と言ってその場から離れさせると、莉瑠に向き直った。

「大丈夫ですか?
怪我どこですか?
手当しないと…」

とても優しい口調で、莉瑠の顔を覗き込んできた。
そしてポケットからハンカチを出すと、莉瑠の擦りむいた手に巻いた。

「大丈夫です。
助けてくれてありがとうございます」

莉瑠が頭を下げると、立たせてくれた。
そして支えて、みんなのところへ連れていってくれた。

「じゃあ…俺は、帰りますね!」

「あ…あの!
お名前教えてください!
ちゃんと、お礼を…
それに、ハンカチ!」

「え?そんなの、気にしないでください!
それに……
“また”会えますから……!」


「――――――莉瑠、今のイケメン誰〜?」 
亜純が、少しニヤニヤして言ってきた。

「わからない。
知らない方だけど…」

「ん?だけど?」  

「向こうの方は、私を知ってる風だった…」

「え?どうゆうこと?」

「“また会える”って――――――」


そして解散になり、莉瑠は駅で英琉の迎えを待っていた。

すると莉瑠の前に見慣れた車が止まる。
後部座席が開いて、英琉が出てきた。

「ん?洸介くんの車?
……………エルル!」

「リルル、お待たせ。
ごめんね、遅くなっ………え!?それ、どうした!?」
莉瑠の格好を見て、驚愕する英琉。

スカートが少し汚れていて、手には見たことのないハンカチが巻かれていたから。

英琉に支えられて、車に乗り込む。
英琉がハンカチの巻かれた手を優しく掴み、顔を覗き込んだ。


「リルル、これ、どうしたの?」
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