溺れて、絆される
数日後――――――

講義室で並んで座り、講師が来るのを待っている英琉と莉瑠。

二人に、ある男が近づく。

「見て!あの人、めっちゃカッコ良くない?」
「え?え?こんな人、いた?」
「十紋字くんに引けを取らないかも?」


「こんにちは!」

「え?
……………あ…貴方は!?」

まさに、莉瑠を助けた“あの男”だった。

「フフ…言いましたよね?
“また会えますよ”って!」

「お前……」

「あ、久しぶりだね!英琉!」

「え?え?
エルル、知ってる方なの?」

「磯端…」

「フフ…
初めまして!磯端 礼斗(れいと)です!」

「磯端…さん?
――――――磯端さんって…」

「貴女と同じ、僕も財閥の人間です。
御笠 莉瑠さん!」

「そうだったんですね!
初めまして!
御笠 莉瑠です!
…………あ!そうだ!これ……」
ハンカチともう一つ、小さな包みを渡す。

「え?捨ててもらって良かったのに(笑)
あと…これは?」

「僅かですが…お礼を…
ボールペンです!
何をお贈りしていいかわからなくて、もしご迷惑でなければお使いください!」

「そんな…大したことしてないのに…
ありがとうございます!
大切に使わせていただきますね!
怪我の方も、大丈夫みたいですね!」

「はい、おかげさまで!
あの時は、本当にありがとうございました!」

ペコリと頭を下げると、磯端も微笑んだ。


「―――――そうなんだ!
じゃあ…洸介くんとも、お友達なんですね!」 

磯端 礼斗。
磯端財閥の御曹司で、イケメンな好青年。
が――――高校生の頃はよく喧嘩をしたり不良とつるんでいて、英琉や洸介同様決して良い人間ではなかった。

洸介率いる、チームTENのライバルと言われた不良軍団を率いていた男だ。

「はい!
あ…でも、悪友みたいなものです(笑)
喧嘩ばかりでしたから!」

「喧嘩…
じゃあ…エルルも?」

「ん、少し…ね…」

「そう…」

「…………ごめんね、リルル…」


思いがけない磯端の出現で、珍しく動揺している英琉。
高校の頃の話は、莉瑠にはあまり話していない。
なので、磯端が余計なことを話さないか窺っていた。

“リルルにはだけは、知られたくない”

その一心で………
< 30 / 54 >

この作品をシェア

pagetop