溺れて、絆される
講義が始まり、一度講義室を出た磯端。
講義中、英琉は磯端のことで頭がいっぱいになっていた。

講義が終わり、建物を出ると磯端が待っていた。

「三人でお茶でもどうですか?」

そう言って、微笑んだ。


「――――――先にお手洗い行ってくるね!」
莉瑠が近くのトイレに行き、英琉は磯端を見据える。

「磯端」

「ん?」

「リルルに“余計なこと”話すな」

「“余計なこと”って?」

「高校の頃のこと、全てだ」

「いいだろ?
若気の至りみたいなものなんだし…!」

「良くないから言ってる」

「二人はフィアンセなんだよね?
だったら、何もかも知り合ってた方が良くない?」

「まだ、正式には違う。
もちろん、俺はリルルを放すつもりないが」

「へぇー!
“あの”英琉が、一人の女性にこんな夢中になるなんてね?(笑)」

「あぁ、だから…リルルには安易に近づくな」

「………はぁ…あのさ!
僕は別に、英琉から莉瑠さんを取ろうなんて思ってないよ?」
少し、呆れたように言った磯端。
続けて言った。

「将来は僕も、磯端財閥を継ぐ。
だから、御笠一族とは仲良くしてたい。
…………そう思ったから、会いに来ただけ。
洸介に間に入ってもらおうとしたけど、なかなか会わせてくれないから……
だから、偶然を装って接触しようとしたんだ。
そしたらたまたま、男に連れ去られようとしてたから助けた。
英琉も、このままだと御笠を背負うんだろ?
将来のために、仲良くしてよ!」

「………」

「それに!心配しなくても、昔のことは話さないよ?
僕も、高校の頃の若気の至りは知られたくないしね(笑)」


「―――――何のお話してるの?」
そこに、莉瑠が戻って来る。

「あ…ううん、特には…」
「今度は、仲良くしてねって話してたんです!
高校の頃は、喧嘩ばかりでしたので…」

「そうなんですね!
フフ…」


カフェに向かい、他愛のない話をする。

「――――なので、僕とも仲良くしてくれませんか?
将来を背負う者として……!」

「………」
微笑み話していた莉瑠が、突然磯端の言葉に口をつぐむ。

「ん?莉瑠さん?」
「リルル?どうしたの?」
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