溺れて、絆される
「…………磯端さん」

「え?はい」

「御笠の将来を背負うかどうかは、エルルが決めることです」

「え?」

「私は、エルルとこれからもずっと一緒にいたいと思っているので。
将来、エルルが御笠を背負ってくれるかどうかはエルル自身が決めること。
なので、私が磯端さんのお力になれるかどうかわかりません」

磯端を見据え、淡々と話す莉瑠。

その凛とした雰囲気に、英琉と磯端は心が掴まれたように見惚れていた。

「………」

「………」

「………」

和やかなカフェの中で、三人のいる席だけピンと張り詰めていた。


「……………フッ…!」
そして、磯端が噴き出した。

「え?」

「いや(笑)
まさか、そんな反応されるとは思わなくて……!
フフフ…ハハハーーーッ!!
あー、腹が痛い…!!」

「え?え?」
莉瑠が目をパチパチと見開いた。

「すみません(笑)
莉瑠さんのお考えは、わかりました!
でしたら、僕も貴方のこと“莉瑠”と呼んでいいですか?
“英琉の恋人として”仲良くしてください!」

「あ…はい!」

「じゃあ…僕のことも“礼斗”って呼んで?
敬語もなし!」

「うん、礼斗くん!」

握手を求める磯端に、莉瑠は小さくその手を握った。


それから――――磯端が洸介も入れて四人で食事しようと言われ、今度は居酒屋にいる英琉達。

「お前だったのかよ!
莉瑠を助けた奴!」

「そうだよ!
びっくりした!
どうやって接触しようか悩んでたら、変な奴に連れ去られてるんだもん!」

「あの時は、本当にありがとう!」

「まぁ、そのこと“だけは”感謝する。
“そのことだけは”」

「でも莉瑠。
一人で出歩かない方が良いよ?
あいつみたいな奴、ごまんといるから」
「そうだぞ、莉瑠」
「磯端と洸介の言う通りだよ、リルル」

穏やかな口調だが……磯端、洸介、英琉の順に責めるように言われ、莉瑠はふてくされる。

「………」

「あ、怒った?」
「怒ってる」
「そんな怒らないで?リルル」

「………」 

「リルル?」
「そんな怒んなよ!」 
「莉瑠」
英琉、洸介、磯端が窺うように顔を覗き込んでくる。

「…………フフ…!」
莉瑠が噴き出した。

「え?リルル?」
「「え?」」

「仲良いんだね!三人とも(笑)」

「「「は?どこか!?」」」

綺麗に声がハモった。
そのことに、益々クスクス笑い出す莉瑠。

「フフフ…!ハモった!(笑)」

目尻に涙まで溜まっている莉瑠に、英琉達も笑い出すのだった。
< 32 / 54 >

この作品をシェア

pagetop