溺れて、絆される
莉瑠お嬢様とリルル 〜英琉 side〜
俺のリルルは、御笠財閥の愛娘。

両親には溺愛されて育ち、愛くるしい容姿のおしとやかな令嬢。

優しく穏やかで、柔らかな雰囲気を持っている。

しかし本当は、特定の相手にしか心を開かない警戒心の強い女だ。

そして実は、人嫌いでもある。
更に、俺にかなり依存していて甘えん坊。

これは、俺だけが知る“リルル”だ。


リルルの睡眠時間は、8時間以上。
21時過ぎると、リルルは途端に眠くなる。

そして翌朝の5時には目が覚めている(らしい)

え?
だって俺は、その頃確実に熟睡中だから。

絵に描いたような早寝早起きの、規則正しい人間だ。

俺が朝目覚めると、大抵起きて俺の寝顔を見つめている。

「ん…おはよ…リルル」

「おはよう!
やっと、起きてくれた!」

「ん…」

「あ…寝ないで!
ギューして?」

この日は講義が午後からなので、俺は二度寝をしようとしていた。

それを無理矢理起こされる。

「もう少し…寝かせて…」

「え…寂しいよ…
ギューして?
お話しよ?」

そこで、俺の意識は途切れた。

再び目が覚めると、何故かやけに身体が重い。
見ると、リルルが俺の上に乗って抱きついていた。

「ん…リルル?」

「あ!起きた!
エルル、起きよ?」 

「わかったから下りて?さすがに重いよ…」

「もう寝ない?」

「うん、もう寝ないから。
起きるから。ね?」

頭を優しく撫でて微笑むと、リルルは頷きゆっくり下りた。
「ごめんね、エルル…」
窺うように謝ってくる、リルル。

俺はできる限り優しく微笑んだ。
「ううん!
俺が寝たからだよね。
ごめんね。
…………さぁ、リビング行こうか?」

コクリと頷くリルルに、手を差し出すと嬉しそうに握ってきた。
俺はリルルの手を引いて、洗面所に向かった。


並んで顔を洗う。
タオルで濡れた顔を拭いていると、鏡越しにリルルが見つめていた。

「………」
しかも、無言で。

俺は何もないフリをするが、実はかなり動揺している。

頼むから、そんな可愛い顔で見つめないでほしい。
ドキドキして、どうしていいかわからなくなる。

「何?」

「ん?エルル、カッコいいなって!」

「………」

いやいや…リルルが可愛すぎて、困ってるのは俺の方なんだが…
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