溺れて、絆される
リビングに向かい、一度ソファに並んで座る。

「エルル、ギュッてしよ?」
小さな身体で、大きく両手を広げるリルル。

俺は包み込むように抱き締めた。

リルルが腕の中で「フフ…」と嬉しそうに笑う。
俺も、幸せな気持ちになる。

リルルの甘い匂い。
香水や、髪の毛の匂い、リルルが塗っている保湿クリームと違う……リルル特有の香り。

それに、酔ってしまいそうだ。


「――――エルル、朝のお食事何食べたい?」

「そうだな…
今日は、和食がいいな!
確か、鮭があったよね?」

「うん。
じゃあ…焼いて、ご飯とお味噌汁にしようか?
あとは…玉子焼きとか?」

「うん。食べたい」

「わかった!」

リルルがキッチンに行くのを見て、俺はベランダに出て煙草を吸う。

ベランダ内の、リルルから見える位置に立つ。

大抵外を眺めながら吸うんだが、時々キッチンにいるリルルに向かって手を振ると、リルルはまるで犬みたいに嬉しそうに笑う。

それがまた、とてつもなく可愛い……!

そしてその行為を見て、俺はリルルに“愛されてるんだ”と安心するんだ。


リルルが「出来たよ!」と声をかけてきて、ローテーブルに並んでいる朝食を並んで座り食べる。

リルルの料理は、本当に美味しい。

最初の頃は、リルルの実家の家政婦手作りのレシピノートを見ながら調理してくれていた。

それをリルルが、少しずつ自分のモノにしていき、今では何を作らせても美味しいのだ。

「ん、美味しい」 

「フフ…良かった!」

「リルルは、ほんと上手いよね。料理」

「そう?
エルルの方が、何でも出来るじゃない?」

「そうだね。
何でも一通りのことは出来るよ」

「フフ…!その方が凄い!
私の自慢の彼氏〜!」

「でも、上手くはないよ?」

「え……?どうゆうこと?」

「何でも出来るけど、飛び抜けて何かに長けているわけじゃない。
面白くないでしょ?それ」

困ったように笑うと、リルルが切なく瞳を揺らして言った。

「…………何でも出来るってことが、凄いことだもん!」

「フフ…ありがとう。
でも俺は、気にしてないよ?」

必死にフォローしようとしてる。
可愛いな。

「…………パパがね。
言ってたよ?」

「ん?」

「“英琉くんになら、莉瑠を渡してもいい”って」

「え?」
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