溺れて、絆される
「私…ね……?
エルルには話してないことがあるの…」

「ん?何?」

「高校生の頃…
エルルと洸介くんが変わってしまったのが怖くて、距離を置いてたでしょ?」

「うん」

「その時、亜純に紹介された男性とお付き合いしようとしたことがあるの」

「え……」

リルル、俺が初めてじゃないのか!!?

思わず固まってしまった俺。
それを知ってか知らずか、リルルが慌てたように言葉を加える。

「あ!でも!お付き合いする前に、その男性が怖気づいちゃったから、結局は何もなかったんだけど……」

あ…あぁ…そ、そうか……

ホッと肩を撫で下ろす。

「お付き合いしようってなった時、パパが会いたいって言い出して……
会ってもらったの。
―――――――――――――」


それは、高校2年の夏。

『は、初めまして…!
ムラサトです』

『ムラサトくん。
君は、娘とは“どの程度の”気持ちで交際したいんだ?』

『え?』

『どんなに過保護と言われようと、僕はね。
“娘との将来を見据えている”相手にしか、娘と交際させる気がないんだよ』

『も、もちろん、将来を見据えてます』

『そうか。
だったら、聞きたいことがある』

『は、はい!』

『僕の娘の好きなところと、直してほしい、または苦手なところを教えてくれ』

『え――――――』



そこまで聞いて、俺は思い出した。

そう言えば、俺も“あの時”同じ質問されたな……(笑)

あの時とは、リルルとの同棲を認めてもらおうと話に行った時だ。

「そいつ、何て答えたの?」

「好きなところは、言ってくれたけど……」

「まぁ…“普通は”言えないよね(笑)
初対面の、しかも恋人の父親相手に」

「でも、エルルははっきり言ってくれた!」



『――――莉瑠の好きなところは、真っ直ぐなところです。
何の汚れもなく、相手を真っ直ぐ見て想いを伝えられる人。
あとは、甘えん坊なところも好きです。
変な男に騙されたりすることないから、警戒心を持って接してくれるのはありがたい。
でもあまり俺にべったりしすぎなのは、直してほしいです。
大学生の間は、ずっと一緒にいれるのでいいんですが…社会人になった時、俺は仕事も手につかなくなるかもしれません。
“今頃、寂しがってるんじゃないか”とか“一人で大丈夫かな”とか考えて』
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