溺れて、絆される
「パパね、言ってたよ。
エルルの言葉一つ一つに“愛情”が感じられたって!
“彼は、莉瑠のことが本当に好きなんだな”って。
本当に好きだから、好きなところと苦手なところが的確に言える。
それに話をしてる時も、一度も目を逸らさなかったって。
エルルの言葉、態度も全部…信用出来たって!」

「そっか」

「自信持ってほしいな…
パパが認めた人なの、エルルは!」  

その意味が、この時俺にはわからなかった。
リルルの父親が、どれ程の人がわかってなかったから。


後日。
その意味がわかった――――――

俺と洸介は、スーツ姿であるホテルの前に立っている。
横には磯端。

「ほんといいのかよ、磯端」
洸介が、不安そうに言う。
俺も、不安だ。

今このホテルのパーティー会場では、財閥同士の会食が催されている。

リルルは両親と来ていて、磯端も親に出席するように言われたらしい。

「あぁ!僕の友人ってことでさ!」

「やっぱり、ダメだ磯端」

「は?なんで!?」

「リルルを驚かせるだろ?」
「俺もそう思う」

「………英琉と洸介ってさ」

「「ん?」」

「“御笠 莉瑠”を知らないの?」

「は?」
「お前、何言ってんの?」

「リルルのことだろ?」
「御笠 莉瑠って、他にもいんの?」

「俺は“逆に”二人といる時の莉瑠を見て、かなりびっくりしたよ?」

「「え……?」」


半ば強引に、会場に入れられた俺と洸介。
会場内に入り、驚愕した。

リルルをすぐに見つけたのだが、まるで別人だったから。

「――――えぇ、えぇ。
フフ…そうなんですね。
でしたら、父にお話しておきますね!」

「あ!
○○のおじ様!
ご無沙汰しております!
………えぇ、今年成人しました!
………はい、よろしくお願いいたします!」 


凛とした雰囲気を纏い、どの相手にも笑顔を絶やさず礼儀正しく対応する。

俺に甘えるリルルが、本当に同一人物なのかわからなくなる程に。


「まさに俺の知ってる“御笠 莉瑠”は、あの人だよ!」
固まっている俺と洸介に、磯端が言った。

そして続けて話す、磯端。

「僕の知ってる莉瑠は……いつも堂々としてて、相手が誰でも臆さない。
僕も含めて、色んな男が取り入ろうとしても絶対に隙を見せないんだ。
それくらい、凛々しい人だよ……!」
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