溺れて、絆される
「………それにさ。御笠財閥っていえば、財閥の中でもトップなんだ。
莉瑠の祖父…先代の会長は、ある意味“国を動かす”って言われた程の立派な人。
かなりの発言力があってさ。
莉瑠の父親もその息子のだけあって、凄い力のある人。
莉瑠の父親に認められたら、将来は安泰って言われるくらいに。
――――――だから僕、莉瑠に接触しようとしたんだよ?(笑)
おじ様にはとてもじゃないけど近づけなくて(笑)」

「そうだったのか…!」

「でも“それも”莉瑠には見透かされてたみたいだけど(笑)」

「………」

あぁ…だからか!

“御笠の将来を背負うかどうかは、エルルが決めることです”

そうゆうことか!

「英琉は凄いな」

「え?」

「同棲」

「え?」

「おじ様に“認めてもらった”ってことだろ?」

「あ、あぁ」

「凄いよ!」


「―――――あれ?エルル!洸介くんも!
どうしたの!?」

莉瑠が俺達の存在に気づき、駆け寄ってきた。

「あ…」 
「磯端に誘われてさ」

あっという間に、俺と洸介の知っているリルルに戻っていた。

「そっか!
フフ…向こうで一緒にお食事しよ?
エルルの好きなローストチキンあるよ!
洸介くんも行こ?」 

俺の手を取り、甘えるように引っ張ってくる。

「でも、リルル」
「俺達、場違いじゃね?」  

「どうして?
私の恋人とお友達だよ?
礼斗くんもいるし!」

「莉瑠もこう言ってるし、行こうよ!」
磯端も微笑んでいる。

俺と洸介は、緊張気味に更に奥に入った。


磯端は両親と挨拶に回るからと、今リルルが相手をしてくれている。

「―――――はい!エルル!」
ローストチキンの入った皿を渡してくる、リルル。 
「ん。ありがとう」

「洸介くんは?何がいい?」 

「俺も同じので…」
洸介もかなり恐縮している。

そりゃそうだ。
華やかだが、何故か冷たい空気の会場内。

少しの失敗も許されないような、ピンと張り詰めた雰囲気だ。

「あんまり、いい場所じゃないでしょ?」

リルルが俺と洸介に苦笑いをする。

「うん」
「そうだな」

「大丈夫。
私が守るからね!
もう少ししたら解散だから、一緒に出よう?」

安心させるように微笑んでくれるリルルに、俺と洸介も頷いた。
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