溺れて、絆される
「―――――俺も、俺といる時のリルルがいいな」


自宅マンションに帰って、スーツとドレスを着替えている俺達。

ドレスの背中のファスナーをリルルに「下ろして?」と言われ下ろしながら、俺はポツリと呟いた。

「え?エル―――――」
振り返ろうとするリルルを後ろから抱き締めた。

「今日のリルル、遠い人みたいだった…」

自分でも信じられないくらい、弱々しい声が出ていた。

「うん…ごめんね…」

「ううん。
リルルを責めてるんじゃなくて」

リルルを後ろに向かせ、向き直った。
「エルル?」

「凛としてて、カッコ良かった」

「そう?(笑)」

「でも……
俺は、甘えん坊なリルルがいい。
俺にしがみついてるリルルがいい」

「うん!
じゃあ……いっぱい甘える〜!」
そう言って、俺に抱きついてきた。


「―――――あ!でも!」
その後一緒に風呂に入っていると、不意にリルルが思い出したように言った。

「ん?」
リルルの髪の毛を洗い、簡単に纏めて髪留めで留める俺。
鏡越しに、リルルを見た。

「甘えすぎは良くないんだよね?」

「は?」

「だから!
エルル、パパに言ってたでしょ?
“べったりしすぎなのは、直してほしい”って!」

「あ、あー!
そうだね。
あれは将来結婚した時、俺が仕事に手がつかないと思ったから。
でもきっと…大丈夫かなって。
今日みたいなリルルなら、そんな心配無用だろ?」

「うん、まぁ…
でも、エルルと離れたくない!」
振り返り、抱きついてきた。

「ちょ…リルル!
抱きつかないで。
俺達、裸なんだよ?」

変な気持ちになる……

「仕事!私も、一緒にするもん!
そしたら、ずっと一緒にいられる〜」

「え!?(笑)」

「やっぱり、ダメ?」

「ダメじゃないけど…
無理じゃないかな?」

御笠グループは厳しいらしいし。
何より、仕事に集中出来なくなる。

「…………だよね…(笑)」

風呂を上がり、身体や髪の毛を拭く俺をジッと見上げているリルル。

本当に幸せそうな顔をする。

そして俺も、本当に幸せだ。

同棲を始めた頃は、正直鬱陶しさを感じていた。
嫌ではなかったが、自分でやってくれないかなと思っていたのに………


俺はリルルに、こんなにも絆されているんだ。
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