溺れて、絆される
「俺と喧嘩っつうより、莉瑠とお近づきになりたいって感じかな?
ほら、御笠財閥の令嬢だからな!
あいつも、磯端財閥の御曹司だろ?
財閥同士の……とか」

「そうか…」

「だから、警戒しとけよ。
………って言いにきた!
磯端って英琉程はないが、イケメンだろ?
で、好青年。
莉瑠は、世間知らずのお嬢だからな。
キュンキュンさせられたら、ヤバいだろ?
俺は、英琉以外の男に莉瑠を渡したくねぇから!」

「…………ん、わかった」


「――――何のお話?」
莉瑠がコーヒーを出しながら、英琉と洸介に言う。

「ううん」
「莉瑠が可愛いって話(笑)」 

「え…//////」

「だから、気をつけないとだよ?
リルルは、色んな奴に声かけられるからね」

「でもそれは、エルルもでしょ?」

「俺は確実にかわせるから」

「私も…かわせるよ」

「そうかな?
…………」

「え?
―――――――」
突然、英琉に押し倒された。

「ほら、抵抗してみなよ」

「や…やだ…怖い……」
両手首をカーペットに押さえつけられ、莉瑠は震えながら必死にもがく。

「出来ないでしょ?
だから、気をつけないと」

「う、うん…
わかった、わかったから!お願い離して!!怖い!!」 

ゆっくり離れる英琉。
優しく莉瑠を起こし、頭を撫でた。

「ごめんね。
でも、リルルが甘くみてるからだよ?
だから気をつけてね」

コクンと頷く莉瑠に、英琉も微笑むのだった。


「――――英琉ってさ。ほんと好きなんだな(笑)」
朝食が済み、片づけている間英琉と洸介はベランダで煙草を吸っていた。

空に向かって煙を吐いた洸介が、空を見上げたまま言った。

「うん、好きだよ誰よりも。
リルルは俺の全てだから」

「…………フフ…!」

「何が可笑しい?」
怪訝そうに見る、英琉。

「――――――俺も、全てだよ」
洸介は英琉に向き直り、微笑んだ。

「え?」 

「英琉と莉瑠は、俺の全てだ……!」

「…………洸介…」

洸介の表情と言葉が、胸に響いたように英琉は微笑んだ。


それから、大学に行く準備をする。
ローテーブルで化粧をする莉瑠を、英琉と洸介がジッと見つめている。

「………」
「………」
「………」

「………リルル」

「ん?」

「そんなに念入りにしなくていいよ」

「え?」

「簡単にしな?
これ以上可愛くならないで?」

英琉は、顔を覗き込んで言った。
< 4 / 54 >

この作品をシェア

pagetop