溺れて、絆される
大学の講義室。

隣でエルルがノートパソコンで作業をしている。
ちょっと覗いてみると、たくさんの株価が表示されていた。

うぅ…全、然!わからない…

「エルル…」

「ん?ちょっと待ってね」

寂しい…

「エルル…」

「待ってね」

寂しい!

「エルル!」

「待って!」

「……っ…」
鋭い声色と視線。

「ご、ごめんね!」
私は謝り、前を向いた。

エルルを怒らせちゃった……

もう一回謝った方がいいよね。
でもそこに教授先生が来て、講義が始まった。

怖い…

「………」
手が震えて、ノートが書けない。

すると、隣からエルルの大きな手が私の手に重なった。

「え……?」
思わず、エルルを見る。

エルルの口が、ゆっくり動いた。

「え?え?」

ご…め、ん…ね

首を横に振り、私も“ごめんね”と口パクをした。


ランチの時間になり、私達は一度大学を出た。
次の講義まで時間があるので、私の好きなグラタンが食べられるレストランに行こうとエルルが言ったからだ。

大学から徒歩15分。
しかし、店の前にはお客さんが並んで列を作っていた。

「待ってるね…」
「そうだね」

「エルル、別の所で食べよう?」
「どうして?リルル、ここのグラタン好きでしょ?」

「そうだけど、結構待たなきゃだよ?」
「いいよ」

行列嫌いで、いつもは待たないのに…

きっと、私の機嫌を直すために連れてきてくれたのだろう。

「エルル、大丈夫だよ。
気を遣わないで?」

「………遣うよ…」

「え?どうして?」

「リルルを傷つけたから」

「でもそれは、私がしつこく声をかけたからでしょ?」

「………」

「ね?他の所行こう?
あ!そこのおうどんは?
確か、冷しざるうどんが美味しかったよね?」

エルルが頷き、私達はおうどん屋さんに向かった。
私は冷やしざるうどん、エルルは天婦羅付きを頼んだ。

「―――――ん!美味しいね!」
「うん、そうだね」

漸く、エルルも笑ってくれるようになった。
微笑み合って食べていると……

「見て!あの人、めっちゃカッコ良くない!?」
「わぁ…ヤバっ!カッコ良すぎ!」

私達の後ろの席から女性の声が聞こえてきた。
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