溺れて、絆される
本当に素敵な自慢の恋人・エルル。

でも私は、高校生の頃のエルルを知らない。

時々、洸介くんや礼斗くんが不意に“別人”だと言うのを耳にしたことがある。

“別人”って、どうゆうことなのだろう。

怖くて、エルルには聞けないけど……


「――――リルル、おやすみ」

一緒にお風呂に入って(当然のように、エルルに洗ってもらった)ベッドに入った、私達。

エルルに抱き締められて、私はゆっくり目を瞑った。

エルルの優しい頭ナデナデに浸りながら、徐々に意識を手放した。


しばらくして――――意識が戻って、ゆっくり目を開けると………

「朝…かな?」

でも、まだ暗い。
サイドテーブルに置いているスマホを確認する。
まだ、01:16を表示していた。

それよりも……

「あれ?エルル?」

エルルがベッドにいない。

「おトイレかな?」

ベッドを下り寝室を出て、おトイレに向かう。
何度かノックをしたけど、何の返事もない。

おトイレの中にもいない。

「え?エルル何処!?」

何処を探してもいなくて、私はパニックになりエルルに電話をかけた。

『――――――リルル?起きたの?』

「エルル!!今何処!!?」

『ごめんね。
洸介に呼ばれて、ちょっと外に出てるんだ。
大丈夫。もうすぐ帰るから』 

「お迎えに行く!!何処!?」

『ダメだよ。
危ないから、家で待ってて?
大丈夫だから、寝てなよ』

「タクシーで行くから!」

『ダメ』

「嫌!!」

『リルル!』

「……っ…」 
エルルの鋭い声が耳に響いて、私は口をつぐんだ。

『そんなに遅くならないから』


通話を切って、私はスマホを握りしめていた。

「………」

シン…と静まり返った、室内。
掛け時計の秒針の音でさえ、恐ろしく感じる。

怖い。
怖い。
怖いよ……

エルル、早く帰ってきて!

私は居ても立ってもいられず、玄関を出て一階に下りた。

エントランスホールを出て、マンション前で待つことにした。

マンション前にある石段に腰掛け、エルルが帰ってくるのを待った。

“ずっと傍にいるから。
もし夜中に起きた時、俺がいなかったら寂しがるでしょ?”

そう言ってたのに、どうしていないの…!? 

どうして、私を置いてお外に出るの?
どうして、一人にするの?

どうして………

私はこの程度で、こんな苦しくなるの……?


しばらくすると、数台のバイクのエンジン音が近づく音がしてきた。
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