溺れて、絆される
「バイク…?」

エンジン音のする方を見る。
5台程固まって、こちらに向かってきている。

そして、私がいる石段の一番下で止まった。

一番先頭で二人乗りしていた男性が、同時にヘルメットを外す。

「「リルル!!!(莉瑠!!)」」 
 
エルルと洸介くんだった。

「あ…」

そして後の4台の一台には、礼斗くんが乗っていた。
「莉瑠?」

「リルル!そんな所で何してるの!!?
家にいろって言ったよね!?」

「莉瑠!危ねぇんだからこんな夜遅くに出歩くな、バカ!!」

誰?
怖い……

私の知っているエルルと洸介くんではなかった。

「ごめ…な、さい……」

私は、弱々しくて消えそうな声しか出せなかった。
それくらい、恐ろしい雰囲気を纏っていた。

「ほら、リルル帰ろ?」

エルルが私の方にゆっくり歩いてくる。
そして私の手を掴んで、指を絡めた。

「ごめん…な、さい…」

「もういいよ。
俺がリルルを一人にしたのが悪いんだし。
――――――洸介、磯端、後はよろしく」

「ん!」
「了解」

「な、何するの!?」

「ん?リルルは知らなくていいよ」
微笑み、頭を撫でるエルル。

「こ、怖いこと?」

「ううん。ほら、帰ろう?」
「莉瑠、またな〜」
「またね!」

いつものエルル。
洸介くんと礼斗くんも、私の知ってる二人だ。

私はエルルに手を引かれ、マンションに戻った。

エレベーターで上がりながら、私はエルルを見上げた。
すると、エルルも見下ろしてきて目が合う。

エルルが微笑んで、私の頭をポンポンと撫でた。

優しくて、柔らかい笑顔。
私はエルルのこの顔が好きだ。

私の事を想ってくれてる表情(かお)


やめよう―――――
私の知らないエルルのことを考えるのは。


帰り着くと、私をベッドに寝かせたエルルがベッド脇に腰掛けて頭を撫でてきた。

「俺、シャワー浴びてくるから寝てて?」

「え?じゃあ、私も!」

「すぐ戻ってくるよ?」 

「もう一人は嫌」

「じゃあ…眠るまでここにいるから」

「どうして?」

「ん?」

「私とシャワー嫌?」

「ううん。そんなことないよ?」

「じゃあいいでしょ?」

私は起き上がって、ベッドを下りた。
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