溺れて、絆される
「私が洗ってあげる!」
「ん」

エルルに椅子に座ってもらい、頭を洗う。
そして、その後身体を洗う。

「フフフ…!リルル、くすぐったいよ…(笑)」
「え?そう?」

「もっと力入れてゴシゴシして」
「え?力入れてるよ?」

「でも、優しすぎてくすぐったい」
「えー!」

「もう、自分でするよ(笑)」

「うん、ごめんなさい…」

シャワーを浴びて、エルルの髪の毛を乾かす。

「エルル、いつ黒髪に戻すの?」

「卒業までにはちゃんとするよ」

「………」

「ん?リルル?」

「どうして…」
声が、震える。

「え?」
私の異変に、エルルが振り返り私を見た。

「どうして、こんなことになったの?」

「リルル?」

「髪の毛染めて、ピアス開けて、タトゥーも…どうして?
洸介くんに誘われたからって、そこまでしなくても…」

「洸介に誘われたからじゃないよ」

「え……」

「リルル、勘違いしてる」

「え?」

「むしろ、洸介には止められた。
髪染めることも、ピアスも、タトゥーも。
俺が、洸介の傍にいたいと思ったから“俺の意思で”したことだよ」

「嘘……」

「あの時、洸介ボロボロだったでしょ?
両親が亡くなって、親戚に煙たがれて…
洸介はあの時、一人だった。
最初はね。
リルルのお父さんに力になってもらおうって話してたんだ。
でも洸介が“莉瑠に迷惑かけたくない”って、頑なに拒否して…」

そんな……
洸介くん……

「洸介は、俺達から離れようとしてた。
ほら、洸介って本当は俺よりも優しい奴だろ?
だから“俺とリルルのために”縁を切ろうとしてたんだ。
洸介を一人にしたくなかった。
だから―――――」

「ごめんなさい!!!」

「え…リルル?」

「私、何も気づかなかった。
ただ…洸介くんに、エルルを取られたってそればっかり……
ごめんなさい、ごめんなさい……!」

「ううん。
いいんだよ?
俺も洸介も、隠してたから。
高校の三年間は“俺と洸介の秘密にしよう”って。
だから、リルルは知らなくていいんだ」


エルルに包まれてベッドに横になりながら、私は罪悪感でいっぱいになっていた。

ごめんなさい、洸介くん。
ごめんなさい。
ごめんなさい。

「リルル」

「ん?」

「大丈夫だよ」

「え?」

「リルルが謝ることじゃないよ」

「でも私……」

「リルルは、いつものように素直で可愛いリルルでいてくれれば良いんだ。
洸介もそれを望んでる」

エルルが、ゆっくり頭を撫でる。

私は頷いて、エルルの胸に顔を埋めた。
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