溺れて、絆される
「莉瑠」

「ごめんなさい!」

「頭、上げてくれ」

「洸介くん…」

「莉瑠は悪くねぇ。
俺は、本当にそう思ってる。
―――――莉瑠。
俺的には、あの時“ほっておいてほしかったんだ”」

「え……」

「あの時……
俺は、確かに寂しくて苦しかった。
でも……
英琉と莉瑠にだけは、同情されたくなかった」

「洸介くん…」

「英琉と莉瑠は“俺の光”なんだ。
財閥のお嬢と、英琉もごく普通の温かい家庭。
俺んとこは、離婚前から喧嘩ばっかだったから……
ずっと俺の憧れなんだ。
だから、これ以上カッコ悪ぃとこを見せたくなかった。
それでも英琉は、俺に無理矢理ついて来たけどな(笑)
だから、いいんだ。
今、こうやって英琉と莉瑠の傍にいられたら、それでいいんだ……!」

「………やっぱり、洸介くんは優しい…!」

「そう?(笑)」

「………だからね」

「うん?」

「“今度こそ”力になりたい……!」

「え?」

「お仕事、大変なんでしょ?
あのお家からも、出なきゃいけないんでしょ?」

「誰に聞いた?
英琉?」

「うん。
ね?力になりたい!!」

「それって、親父さんに話すってこと?」

「うん」

「だったら………
“自分で話がしたい”」


善は急げと、その足で莉瑠の父親に会いに行った二人。

ここは、御笠邸。
「ママ、パパは?いるよね?」

「えぇ。
こちらは……鷲尾くん?」

「はい!ご無沙汰してます!」
丁寧に頭を下げる、洸介。

「元気そうね」

「はい!おかげさまで!」

「ママ、パパは?お部屋?」

母親は意味深に洸介を見て、部屋に誘導した。


「――――どうした?
英琉くんがいなくて、寂しくなった?(笑)」
父親がクスクス笑って、莉瑠を見た。

「そうじゃないの。
パパに、大切なお願いがあって」

「あ、莉瑠。
“俺が自分で話す”」

莉瑠が頷くと、洸介は父親を見据えた。
「俺…あ、僕の話を聞いてください」

「ん?
―――――――」

洸介は、シュンを含めたチーム・TENの仲間達と解体の仕事をしていた。

しかし、突然その解体会社が倒産したのだ。
住んでいた貸家も、追い出される寸前なのだ。

「それで?
“助けてほしい”ってことか?」

「はい」

「パパ!お願い!
洸介くんの力になってほしいの!」

洸介と莉瑠は、頭を下げた。


「…………一つ、聞きたいことがある」

そんな二人に、父親が静かに言った。
< 48 / 54 >

この作品をシェア

pagetop