溺れて、絆される
「はい」
顔を上げて、父親を見る洸介。

「7年前。
何故、俺に助けを求めに来なかった?」

「え?」

「何故今と同じように、莉瑠と一緒に頼みに来ることは考えなかったのか?
酷い言い方をすれば“莉瑠を使えば”良かったんじゃないのか?」

「………それは…
“莉瑠にカッコ悪いところを見せたくなかったから”です」

「………」

「正直、莉瑠と英琉には“劣等感”を持ってました。
だから二人に同情されたくなかった。
実際、英琉から“おじさんに頼んでみよう”って声かけられました。
“莉瑠にお願いして、三人で頭を下げよう”って。
でも俺は“ほっておいてほしかった”
二人の重荷になりたくなかった。
これ以上、惨めになりたくなかったからです」

「だったら、今日は何故来た?」

「英琉と莉瑠の“強い想い”に応えたいと思ったからです。
二人は、声を揃えて“力になりたい”と言ってくれた。
それに、今回は仲間もいる。
俺自身のプライドとか、劣等感とか…そんなことで意地になる方が、カッコ悪いと思ったからです」

「……………御笠グループの本社に、明日9時に来い」

「え……!?」

「時間厳守」

「え?え?」
「パパ?」

「警備員が足りなくてな。
二人なら、まぁ…なんとかなるだろ」

「あ、ありがとうございます!!」
「パパ!ありがとう!」

「言っておくが、仕事は厳しいからな?」

「はい!」

「その代わり、マンションも貸してやる」

「ありがとうございます!」
もう一度、頭を下げた。


「―――――洸介くん」
父親が、洸介を見据える。

「は、はい!」

「“良い幼なじみを”持ったな」

「え?」

「…………英琉くんにも、同じことを頼まれた」

「え……」

「“俺が責任を持つので、洸介を働かせてください”ってな」

「英琉、が…?」

「あぁ。
“だから”良い幼なじみを持ったな!」

「はい!!」

微笑む父親に、洸介も嬉しそうに笑った。
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