溺れて、絆される
「リルル、どうしたの?
なんだか、不機嫌だね」

「今は言わない」

「え?教えてよ。
じゃないと、解決してあげられない」

「いいの。
自分でどうにかするから。
エルルは、私と違って忙しいし」

なんだか、トゲのある言い方だ。

それでも英琉は、莉瑠に反論したりしない。
どんなに当たられても、理不尽に怒られても… 

優しく、穏やかに問いかけ、ひたすら聞き役に徹する。

それは高校の時の過ちがあるからだ。

「わかった。
じゃあ…言えそうになったら言って?」

頭をポンポンと撫でると、莉瑠もゆっくり頷いた。

そして時間が経つと、莉瑠は必ず英琉に謝ってくる。

「エルル、さっきはごめんなさい。
当たっちゃった…」

だから英琉は、絶対莉瑠に反論したりしない。

英琉が莉瑠を叱る時。
それは莉瑠の身に危険が及ぶまたは、及びそうな時だ。


そんな中。
英琉のスマホが鳴り響いた。

「…………ん?洸介?」 
スマホ画面を見て言う、英琉。

「え!?洸介くん!?」

「もしもし? 
…………うん、うん。
わかった、すぐ行く―――――」
「ダメ!!!行かないで!!」

英琉に縋りつく、莉瑠。

そんな莉瑠に英琉は「洸介、かけ直す」と通話を切り、莉瑠に向き直った。

「すぐ帰るから、行かせて?」
英琉は、優しく言い聞かせるように言う。

「どうして?
ずっと傍にいてくれるって言ったでしょ!?」

「仕事の話をするだけだよ?」

「会社に行くの?」

「うん、そうだよ」

「だったら、一緒に行く!
会社の前で待ってるから!」

「それはダメ!!」

「どうして!?
お外で待ってるんだから、邪魔にはならないでしょ!?」

「もう暗いのに、外で持たせられるわけないでしょ!?
危ないんだから!」

「どうして怒るの!?」

「リルルが暗い中、一人で外にいようとするからだよ!」

「それだけ?」

「は?それだけって?」


「洸介くんと、秘密の密会するんじゃないの!!?」


「………」

「………」

「………は?」

「エルルは、私のエルルなんだからね!?
洸介くんは幼なじみで、親友!!
それだけなんだから!!」

「………え?え?リルル、何言ってるの?」

英琉は目が点になり、固まっていた。
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