溺れて、絆される
莉瑠は大学を出て、近くのパン屋に向かった。
最近の英琉と莉瑠のお気に入りのパン屋だ。

アンパン、カレーパン、クロワッサン、それとメロンパン。

その4つを取り、レジに持っていく。
いつも、二人で来たときに買う種類だ。

大学に戻り、大学内のコンビニでいちごミルクを購入。
そして、広場のベンチに腰掛けた莉瑠。

いちごミルクとメロンパンを取り出し、ゆっくり食べ始めた。

「………」 

びっくりだった。
リルルのことだから、友人に連絡し、友人と一緒にランチするのだと思っていたから。

莉瑠はメロンパンを食べ終わると、スマホを取り出し操作し始めた。

すると英琉のスマホが鳴った。
莉瑠から、メッセージが入ってきた。

【広場の前で待ってます。
できる限り、早く戻ってきてね♪
あと、エルルの好きなパン買ったよ!】

「あー、あのパンは俺に…か」

呟き莉瑠を見ると、莉瑠の周りに男子学生が囲んでいた。

「………」

英琉は、堪らなくなる。
自分が意地悪をしたのに、凄まじい嫉妬心に包まれる。
早足で莉瑠の元へ駆けていった。

「いいじゃん、莉瑠ちゃん!」
「どうせ今一人なんでしょ?」
「○○のケーキ、食いに行こうよ〜」

「ごめんなさい、もうすぐ彼が戻ってくるので」
莉瑠とは思えない淡々とした声色。

英琉に向ける甘さが、微塵もない。

「リルル!」
英琉が呼びかけると、莉瑠の表情がパッと華やいだ。

「エルル!
ごめんなさい、彼が来たから!」
そう言って、パタパタと英琉の方に駆け出した。
微笑み見上げる莉瑠を見ながら……

結局俺の方が、リルルから離れられないんだ。
俺の方が、リルルを捕えて離せないんだ。

そんなことを考えていた。


「――――リルル、一人でいたの?」

「うん」

「なんで?
てっきり友達とランチするんだと思ってた」

「エルルといられないなら、一人がいい」

「え?」

「一人の方が、気楽で好き」

「そっか…
……………フフ…!」
噴き出す、英琉。

“俺達は、お互いに囚われている”

それが可笑しくて堪らない。

「ん?エルル?」

「ん?ううん!」

「……??」

首を傾げる愛しい莉瑠を見ながら、英琉も微笑み頭をポンポンと撫でた。
< 7 / 54 >

この作品をシェア

pagetop