冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
 好奇心旺盛な名無しは、突飛な行動も多かったのでソニアは気が抜けなかったが、ふたりは穏やかな時間を過ごしている。

 その一方で、フレミング夫妻の態度から名無しの未来を案じたソニアは、どんな苦境でも挫けないように彼女を育てようと決心した。両親と姉の存在を伝えるか迷ったが、後で真実を知るよりはと四歳になった名無しに事実を伝える。

「お嬢様にはご両親と双子の姉妹がいらっしゃいます」
「ごりょうしんってなに? ふたごのしまい?」
「はい、お嬢様の命をこの世に授けてくれたお方がご両親で、一般的には男性をお父様、女性をお母様と呼びます。双子とはお母様のお腹の中で一緒に育った子を言い、お嬢様のお姉様になります」

 それがなんなのかと名無しは思った。今の生活に両親も姉もまったく関わりがない。関係のない人たちのことを説明するソニアの目的がわからなかった。

「世間ではそれを〝家族〟と呼びます。大抵は一緒に暮らすのですが、中にはさまざまな理由で離れている場合もあります」
「ふうん、そうなんだ……だから、わたしだけソニアといるの?」

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