冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
「わたしは幸せを探すのが得意なのです」
「しあわせってなに?」
「そうですね……心がウキウキしたり、ふわふわと温かくなったりすることでしょうか」
「どうしたらしあわせがみつかるの?」

 コテンと首を傾げる名無しに、肩までの黒髪になったソニアは柔らかな笑みを浮かべた。

 これから彼女に訪れるであろう苦難に対し、できるだけ心が穏やかに、(したた)かに過ごしていけるよう思いを込める。

「たとえば、昨日の夕食はいつもよりお肉がたくさん入っていてご馳走(ちそう)でした。お嬢様も笑顔になってわたしは幸せでした」
「そうなの? ほかにはどんなのがある?」
「他にも、天気がいい日は洗濯物があっという間に乾いて幸せですし、お嬢様が笑顔で庭の花を見ているのも幸せだと感じます。反対に雨の日は洗濯をお休みして、お嬢様とたくさん遊べるので幸せです。毎日毎日、幸せはたくさんあります」
「そうなんだ……!」
「お嬢様、〝ない〟ことに目を向けるのではなく、〝ある〟ことに目を向けるのです」

< 14 / 36 >

この作品をシェア

pagetop