冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
 どうかこの思いが小さな彼女に届きますように、そう祈りながらソニアは言葉に想いを乗せた。

(両親の愛を知らないこの子が、少しでも幸せでいられるように。どんな逆境でも挫けない強い心を持てますように)

 まだ意味を理解できないのか、名無しは首を傾げて考え込んでいる。

 ソニアはこれから名無しに訪れる苦難を想像して悲しみに染まるが、小さな少女を不安にさせまいとニッコリと笑った。

「そうしたらわたしのように幸せ探しの達人になれますよ」

 最後に小さくウィンクして、幼い名無しの笑顔を引き出す。

「しあわせさがしのたつじんって、カッコいい……!」

 キラキラと輝く金色の瞳は、確かにこの時未来への希望を灯した。

 もっともっとたくさんのことを幼い彼女に伝えたい。一日でも長くそばにいて、彼女に愛を伝えたい、とソニアは心から願う。

「では、これからはお嬢様も幸せ探しの達人になれるよう、一緒に頑張りましょう」
「うん! 頑張る!」

 弾けんばかりの笑みを浮かべる名無しを見て、ソニアはこぼれそうになる涙を()み込んだ。

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