冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
 そこには朝は五時に起床し屋敷中を掃除すること、食事はフレミング家と使用人たちが食べた余り物のみ、夜は全員が寝静まってから休むこと、フレミング家の命令に逆らうことは許されないなど、使用人以下の奴隷なのだと徹底的に植えつけられた上、常に敬語で話せと書かれていた。

 家令は万が一にも名無しが間違わないように(くぎ)を刺す。

「これらをしっかりと読んで頭に叩き込め。それから旦那様はもちろん、奥様やアリッサ様にも()()れしく口を利くなよ。いくら血の(つな)がりがあるとはいえ、お前は生まれた時から奴隷なのだ」
「ど、どうして血の繋がりがあるのに私は奴隷なの……ですか?」

 名無しが今まで読んできた本や新聞には家族とは血の繋がりがあって、同じ家に住み苦楽を共にするものだと書かれていた。

 当然、どうして自分だけがこんな扱いなのかと疑問を抱く。確かにこの屋敷で受け入れられていないと肌で感じていたが、明確な理由がわからない。

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