冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
「双子がフレミング家にとって不吉なことだからだ。それはすべて双子の二番目として生まれてきた、お前のせいだからだよ」
「だからみんな『不吉』だと言っていたんだ……でも、私はなにも悪いことをしていません。ただ、ソニアと一緒に暮らしていただけです」
「お前が存在するだけで凶事を引き寄せるのだ。フレミング侯爵家の存続を願うなら、現実を受け入れろ」

 家令の氷のような言葉に名無しはようやく己の立場を理解した。好奇心旺盛で素直な気質の彼女は家令の言葉を真っ直ぐに受け止める。

(そうだったんだ……私が存在するだけで大変なことに……なるのですね)

 重く沈む気持ちに引きずられるように、俯いて足元をジッと見つめた。

 奴隷である名無しは、彼らを家族と呼ぶことはもちろん、父や母、姉として呼ぶことを許されていない。あくまでもフレミング家の奴隷として、旦那様、奥様、アリッサ様と呼ばなければならないのだ。

 だが幸いにもソニアの教育がここで実を結ぶ。

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