冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
 指の先はすでに温度を感じないほど冷えきっていて、全身からだらだらと冷や汗が流れ落ちる。

「今後どのような生活が待っていても、自業自得だ」
「はい、シルヴァンス様のおっしゃる通りでございます」

 名無しは素直に認め、ただただ許しを乞うしかないと考えた。なにも持たない名無しが他にできることはない。カーペットに額をこすりつけていると、向かいのソファーからシルヴァンスが立ち上がり一歩、また一歩と名無しへ近付いてくる。

「……王命を欺き、僕を(だま)した罪は重い。覚悟はいいか?」

 一段と低くなったシルヴァンスの声に、名無しはビクッと身体を震わせた。頭を下げているからシルヴァンスの表情は見えないけれど、その声音だけで腹に据えかねているのがよくわかる。

 しかも、世間では冷酷で人間の心がないマッドサイエンティストと呼ばれているシルヴァンスだ。そんな男が心底怒っているなら、名無しは決して無事では済まないだろう。

「……はい」

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