冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
 しかし、最近では怪しげな研究に没頭し屋敷にこもっているという記事が掲載されていた。夜会などには姿を見せず、たまに出席したとしても冷酷な態度で人を寄せつけない。それゆえいまだに独身で、恋人すらいないとも。

 そんな人物へ嫁ぐのは恐ろしいだろうが、それだけでアリッサの罪を償えるのかと名無しは疑問に思った。

「嫁ぐだけで罪を償うことになるのですか……?」
「……国王陛下はマードリック公爵の後継問題を心配している。あんな頭のおかしい公爵に自分の娘を嫁に出す貴族などおらんからな。だから子供を産んで国に貢献すれば、罪は問わないと国王陛下がおっしゃったのだ」

 その発言はモーゼスが名無しは娘ではないと言ったも同然だったが、名無し自身も今では父だと思っていないのですんなり納得する。

「なるほど、つまり才能あるマードリック公爵様の血筋をこの世に残せばお役目を果たしたことになるということですね! わかりました!」
「あ、ああ。そうだな。万が一戻ってきたら、またここで奴隷として使ってやる」
「はい! ありがとうございます! しっかりとお役目を果たせるよう頑張ります!」

 あまりにも元気のいい名無しの返事に、本当に理解しているのかとモーゼスは不安になった。

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