冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
「お前、本当にわかっているのか……?」
「もちろんです! アリッサ様の代わりにマードリック公爵家へ嫁ぎ、お世継ぎを(もう)けるのが私のお役目ですよね? 人体実験の対象になった際はしっかりと目的と方法を伺い、出産に関する機能はそのままにしてもらうようお願いいたします!」
「そ、それならいいが」

 不安な気持ちが拭えないモーゼスだったが、名無しにやる気があるようだったので口を閉ざす。だが、ハッとなにかに気が付いた名無しは表情を曇らせ、青ざめた顔で大きな問題点を指摘した。

「あああっ! ですが、私はアリッサ様のように優雅に振る舞うことができません……どうしましょう!?」
「……それなら教師を手配するから心配ない。だが時間がないからな、期間は二カ月だ。それですべての礼儀作法を身につけろ」
「はい、承知いたしました!」

 モーゼスの言いつけは無茶な内容だったが、初めて名無しのために労力を割いたことに驚く。

(教師まで用意していただけるなんて、私の責任は重大ですね……! フレミング家のお役に立つためにもマードリック公爵様には絶対にばれないようにしなくてはいけません)

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