冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
 たとえ目が見えなくなったり四肢が欠損したりするような実験でも、それで罪滅ぼしができるなら安いものだと思う。五体満足な方がいいけれど、生きていけるなら多少の不便は仕方ないと腹を(くく)った。

 シルヴァンスに促されソファーへ座り直し、いざ署名しようとしたところで名無しの手が止まる。

「どうした? やはりサインしたくないのか?」
「いえ……どうしましょう。私、名前がないのです。なんとサインしたらよいでしょうか?」

 これは名もなき令嬢が幸せを(つか)み、マッドサイエンティストと(うわさ)される公爵の深い愛にからめとられる物語――。



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