冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
第一章 嫁ぎ先はマッドサイエンティストな公爵様
 フレミング侯爵家の次女として、ひとりの令嬢がこの世に生を受けた。

 彼女の不運は、母親が双子を身籠った時から始まる。

 当主であるモーゼスとその妻ベリンダは社交界でも噂になるほどのおしどり夫婦だ。

 モーゼスは黒髪に鋭い金色の瞳が印象的な美丈夫、ベリンダは海のような碧眼(へきがん)に真紅の髪が美しい大輪の花のような淑女で、見目麗しい夫妻としても貴族たちの視線を集めている。

 両親は待望の子を授かり誕生を楽しみにしていたが、お腹が膨らみはじめた頃の診察で医師から告げられた言葉にひどく驚いた。

「そんな! まさか、もうひとりいるだと……!?」
「嫌よ、双子なんて産みたくないわ!」

 医師は初めての妊娠で不安になっているのかと、ベリンダに優しく声をかける。

「確かに双子の出産はリスクが高まりますが、私も万全を尽くしますので、どうかご安心ください」
「だが双子なんて産んだらフレミング家に不幸が訪れてしまうのではないか!」
「あなた、わたくしはどうしたらいいの……?」

 しかしフレミング夫妻は深刻な表情のまま、青い顔で(うつむ)いてしまった。

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