冷酷な公爵様は名無しのお飾り妻がお気に入り〜悪女な姉の身代わりで結婚したはずが、気がつくと溺愛されていました〜
 双子についてあまりにも恐れている様子を見て、医師は誤解を解こうと口を開く。

「双子を産んだら不幸が訪れるなど、聞いたことはありませんが……」
「少し黙っていてくれ! これはフレミング家の問題なのだ!」

 なぜかわからないが、フレミング家は双子がよく生まれる家系だった。

 双子が生まれるたびに、投資に失敗したり、災害が起こったり、経営が逼迫(ひっぱく)したりしたので、やがて双子は不吉の前兆だと思われるようになったのだ。

 ベリンダは嫁いだ時にそう教えられ、モーゼスと同じく双子に対して負の感情を抱いている。

 二番目に生まれ落ちた赤子は不幸を呼ぶ存在だと忌み嫌われ、その時の当主たちは後から生まれてきた赤子を売り飛ばしたり、森へ捨てたり、屋敷で奴隷のように扱ってきたりした。

 さらに、双子の出産は母体の負担が大きく、出産時の危険度も跳ね上がる。そのため出産で命を落とす母親が相次いだ。

 原因はさまざまだったが、それもすべて後から生まれてくる赤子のせいだとフレミング家の当主たちは考えた。

 いずれにしても、双子の二番目として生まれた子は、まともな生活とはほど遠い暮らしを送ることになる。

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