milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜
やっぱり『Gemini』は、なにも頼んでもおいしい。


「みひろちゃん、めっちゃいい顔して食べてくれるなぁ」


はっとして横を見ると、遥さんが微笑みながらわたしのことを見ていた。


…恥ずかしい。

すっかり自分の世界へ入っていた。


「ごめんごめん、俺のことは気にせんといて。ゆっくり食べてくれたらええから」


遥さんはそう言うと、キッチンへと戻っていった。


気を取り直して、わたしはカフェオレの入ったマグカップに手を伸ばす。


楽しみにしていた遥さんのカフェオレ。

それをひと口――。


その瞬間、口の中に苦みが広がった。


にっ…苦い。


と、声に出そうなところをなんとか飲み込んだ。


苦いといってもわたしにとってはということで、おそらくカフェでよく出てくるカフェオレの味だと思う。
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