milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜
開けた場所にたどり着いた。


そこは中庭のようで、オレンジ色の外灯が1つぼんやりと灯っているだけ。

その向かいに、古民家があった。


近づいてみると、小さな看板に【 Gemini(ジェミニ)】と書かれてあった。


…本当にあった。

こんなところにカフェが。


窓の格子の隙間からは、温かいオレンジ色の明かりがもれている。

かすかにデミグラスソースのいい匂いもしている。


グゥ~…


わたしのお腹が一層大きく鳴き始める。


…よし!

今日の夜ごはんはここにしよう!


そう思って、お店の引き戸に手を伸ばすと――。

ちょうど引き戸が開いて、人の気配を察知したわたしはなぜかすぐそばの物陰に隠れた。


なぜ隠れてしまったのかは自分でもわからない。


中から出てきたのは、アイボリーのエプロンを着たマッシュヘアの男の人。
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